経済指標は絶対ではない


経済指標は、相対的であり、絶対的ではない。不変的、普遍的経済指標はない。
各国の経済事情は、同じではない。その時の状況、地理的条件、産業構造、資源、人口、生活水準、民度、風俗習慣、発展段階等は一定ではない。

赤字が是か非かではない。どの様な前提で赤字なのかが問題なのである。前提によっては、赤字は是であるか否であるからは変わる。
一律に赤字だから悪いとは決めつける事はできないし、危険な行為である。

現金収支は、ゼロ和である。しかし、利益は、ゼロ和ではない。
経常収支は、国際市場ではゼロ和である。
家計、財政、民間企業、海外部門の現金収支は、ゼロ和である。

この事は、論理的に自明な事である。

論理的に自明な事を無視する事は、非科学的な態度である。
全ての国の経常収支を黒字化しろと言ったり、また、黒字化する事が可能だとするのは、非科学的態度である。
そのように非科学的な態度は、問題を拗らせることはあっても改善する事はできない。

つまり、全ての国や地域、経済主体の経済的評価を一律の経済指標で判断する事はできない。前提条件が違うのである。

全ての国の経常収支を、全ての部門の現金収支を黒字化しようとしたら、全ての国、全ての部門の現金の過不足を完結しなければならなくなる。それは、全ての要素を平準化する事を意味し、国際分業を否定する事で非現実的である。
全ての国を黒字化しようとする事は、全ての国の経済行動や方向を統一する事を意味し、それは、経済を一定の方向に暴走させてしまう。
経済で重要なのは、分散と均衡であって、個々の部門の働きと全体の働きの整合性が問題なのである。

全ての国、全ての部門に固有の事情があり、条件に差がある事を前提としない限り、経済問題は解決できない。

経常収支の赤字は、赤字国の問題だけではない。黒字国の問題でもある。
そして、赤字国だけで解決できる問題ではない。だから、解決をするためには、国際間で協議する必要がある。

個々の指標は、各国の経済状態や前提、個々の部門の事情を反映したものでなければ意味をなさない。

経常収支が赤字だというのは、状態を表しているのであり、倫理的価値観を表しているわけではない。
その状態を是とするか否とするかは、個々の国の状態全体との整合性をいかにとるかの問題である。

現在の金融機関の与信調査は、消極的、保守的である。
景気の改善や産業、企業の育成はできない。
消極的、保守的評価は、過去の実績に基づいているからである。
過去の実績に囚われていたら、将来の収益を生み出せない。
費用対効果の改善に結びつかず。経費節減などの消極的手段しか評価できない。
基本的に収益予測や収益の改善に結びつかなければ企業や産業の育成はできず。結局投資ではなくて投機になってしまう。
利益は、指標に過ぎない。根本は、利益によって何を測るかである。
利益が金儲けの手段でしかない、投資家の権益を守るための指標でしかない事が問題なのである。
それは、会計を生業とする者の倫理観にも影響する。
法律家の使命は、法のためにあるのではなく、法の正義のためにあるように、会計家は、会計のためにあるわけではなく。企業や社会を成り立たせる事が指名である事を忘れてはならない。

金融機関や実業家は、利己的で私利私欲でしか行動しないという前提に立っている様に思える。

聖職者哲学者、学者に経済や政治を任せてうまくいったためしがない。なぜならば、経済も政治も生々しい現実の上に成り立っているからである。怨恨や欲望、虚栄心といったドロドロとした感情の上に経済も政治も成り立っている。経済は幻想ではない現実である。

参入規制が是か、非かが問題なのではない。経済規制は絶対的な事ではなく相対的な事である。市場の状態、環境に基づいて是非が問われるべきなのである。

経済政策は、相対的であり、絶対的ではない。
だからこそ競争が必要なのであり、独占や寡占は避けるべきなのである。独占は、結局、独裁を生み出す。
経済指標は、生きるために必要な物事を見極めるためにある。人々が生きるために必要な情報が得られないのなら、経済指標など何の意味もない。経済指標は、経営者の成績を測る基準ではない。

生産性や金儲けでしか経済の目的を見いだせない事が問題なのである。経済とは、生きるための活動であり、経済の仕組みは、人々を生かすための仕組みなのである。
仕事によって人は生かされているとするならば、人々に仕事を与える事こそ経済本来の目的なのである。
根本は、この国をどの様な国にするのか。これからの社会をどの様な社会にするのか。どの様な生き方をすべきなのかといっとた明確な構想である。
金融家や実業家には、高潔さと強い使命感が求められている。
過剰設備、過剰負債、過剰雇用を防ぎ、健全な産業を育成するためには、費用対効果を融資に結び付けるる必要がある。
今の実業家や金融家は、自らを卑しめている。




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