貨幣経済

 貨幣経済は、貨幣価値に貨幣という実体を持たせることによって貨幣価値を数値化し、流通させることを可能とした。
 この事によって物の流れに対して反対方向に流れる貨幣の流れを作る出したのである。そして、貨幣の流れによって物の流れを促す働きを成立させたのである。この事が貨幣経済の根本的活力である。
 一度貨幣経済が成立すると経済は、貨幣によって表現され計られることになる。

 貨幣経済というのは、ギャンブルに似ている。胴元がチップをプレイヤーに配分するところからゲームは始まり、チップがなくなればゲームオーバーとなる。そして、プレイヤーは基本的にチップを借り、必要に応じて物と交換するのである。
 最初、プレイヤーは、チップを胴元から借りることになる。謂わば、中央銀行は胴元のような存在なのである。そして、貨幣の本質は借金が元となっている。この事は、貨幣経済の本質を象徴している。
 プレイヤーにチップを予め渡しておかなければゲームは始まらないように、貨幣を消費者に予め渡しておかないと貨幣経済は成り立たない。如何に、どの様にして貨幣を消費者に配分するかが、貨幣経済の根本なのである。
 最終的に経済が成り立たなくなるのは、デフォルト、支払い不能に陥る事であり、それは残高が枯渇する事を意味する。

 生産と生産手段が関係づけられていないと経済は有効に機能しない。例えば労働と分配が関係づけられていない経済の仕組みは制御する事ができない。

 経済の実質、実体、正の働きは、物と人にある。金は経済の影、負の働きである。物の経済の基本は生産と消費であり、人の経済の基本は生産手段と分配にある。労働は、生産手段の一種である。

 全体的な均衡と部分的な均衡は必ずしも一体ではない。自由経済では、部分的不均衡が全体的均衡の前提でもある。部分的不均衡をどう全体的に調和させていくか、それが自由主義経済の要諦である。

 貨幣経済は、貨幣価値の集合として見なすことができる。

 貨幣経済を有効に機能させるためには、貨幣価値の働きを知る必要がある。
 貨幣の働きは貨幣の属性に依存しているからである。
 貨幣価値の働きを知るためには、貨幣の属性を明らかにする必要がある。貨幣は、第一に価値を表す数値情報である。第二に、貨幣価値は、自然数、離散数である。第三に、対象の貨幣価値を確定する。第四に、貨幣価値の単位を実体化する。第五に、物質化することが可能である。第六に交換が可能である。第七に、所有することができる。第八に、移動、運搬することが可能である。第九に、保存することができる。退蔵することが可能である。第十に、基準を統一する事によって価値を一元化し、異質な物の演算を可能とする。第十一に、任意の機関が、製造、発行することが可能である。第十二に、貨幣は、任意の単位によって独立した体系を構築することが可能とする。第十三に取引のための手段、道具である。第十四に、物や用益の流通を促す働きがある。第十五に、売り買い、貸し借りのための手段である。第十六に、労働を評価する手段になる。第十七に、貨幣は、信用制度の基づく権利、証憑である。第十八に、人造物である。

 貨幣価値は、相対的な値であり、取引によって確定する。

 集合というのは、何らかの前提や条件に基づいて集められた点や数と言える。点や数の根底には、何らかの素材がある。と言うよりも集合を構成する点や数は、何らかの対象を象徴している。
 そして、集合を構成している点や数には、何らかの偏りや特性がある。
 一見、平らに見える数の集合にも凸凹がある。しかも、その凸凹には特性や偏りがある。集合を構成する点や数、即ち、要素は、現実の事象を反映したものである。

 大量生産、大量消費は、商品を単一化、標準化させる働きがある。即ち、大量生産や大量消費は、商品を平均化するのである。大量生産、大量消費には、平均化することで個々の製品の持つ個性を相殺する働きがある。
 そして、この点が大量生産、大量消費の欠点なのである。
 個人の欲求を一元一様のものとするか、多種多様なものとするかによって経済に対する考え方は決まる。大量生産主義も共産主義も方向性は共通している。即ち、大量生産主義も共産主義も生活の均一化の方向に向かっているのである。

 人間の欲求は、一律一様ではない。それが大前提である。生活の均一化は、人間性に背いている。故に、経済の自律性に背いているのである。
 豊かさとは、多様さにある。市場の成熟は、多種多様化させる事である。

 集合を構成する要素は、その働きが重要であり、働きの方向も重要となる。

 運動を回転運動にして制御するためには、一つの働きが作用する時、逆方向の働きが作用するように設定する必要がある。この様にして設定された働きを作用反作用の関係にあるとする。
 貨幣経済では、貨幣の流れと物の流れの働きが作用反作用の関係にある。
 貨幣の流れは名目的価値を形成し、物の流れは、実質的価値を形成する。

 貨幣に作用反作用の働きを生み出すのは、ゼロサム関係である。

 貨幣の働きは取引によって成立する。取引は、基本的にゼロサムである。

 物の流れには、反対方向の金の流れがある。この点が重要なのである。問題はこの貨幣価値と物の価値の均衡にある。
 経常収支が赤字であるという事は資本収支は黒字になる。つまり物を輸入するために不足した金は借りなければならない。故に、金不足を問題にする以前に、金を調達するための信用力を問題とするべきなのである。

 経済の基本は、入りと出にある。つまり、経済主体に対して人、物、金がどれくらいの量がどの様に、どこからに入り、何処へ出て行ったかによって経済の状態は決まるのである。

 貨幣を流通させる働きは、貸し借り、売り買いである。貨幣の流通を促す働きがあるのが金利である。
 貸し借りは権利を生み出し、売り買いは物流を生み出す。
 貸しと借り、売りと買いは、一組で成立する。即ち、視点、立場を変えれば、借りは貸しであり、売りは買いである。
 貸し借りと売り買いは、表裏の関係を為している。そして、これは、基本的に入りと出を意味している。つまり、資金の流れは残、入、出、残である。

 経済主体に対する入金は、所得と借入金の和である。出金は、消費に対する対価と投資、及び余剰である。投資は生産手段、余剰は、貯蓄と見なす事もできる。借入金と生産手段と貯蓄はストックを形成する。

 貯蓄というのは、視点を変えると金融機関への貸付であり、金融機関の負債である。この様に、貸し借りというのは表裏の関係にあり、貯蓄と負債というのは、同じ働きをしていると見なすことができる。

 ゼロサムによる作用反作用の関係によって成り立っている貨幣経済では、平均や分散が特別の意味を持っている。
 そして、平均や分散が意味を持つという事は、中心極限定理や正規分布が重要だという事を示唆している。
 また、ベイズ確率の有効性も示している。
 経済現象を予測する場合、先験確率や事後確率をどの様に設定するかが重要な鍵をにきる。故に、ベイズ確率やベイズ統計が重要となるのである。

 注意しなければならないのは、キャッシュフローは非ゼロ和である。。キャッシュは自然数。つまり、正の数である。故に、キャッシュフローでは残高が重要となる。
 複式簿記は、非ゼロ和である現金収支をゼロ和の関係に変換する操作である。そして、非ゼロ和からゼロ和に変換する際、鍵を握っているのが時間価値である。

 経済事象を予測する際、フローとストックを明確に区分する必要がある。経済現象は生産と消費の過程で生じる。フローは、現金の流れによって形成され、ストックは、生産手段と権利によって形成される。

 消費とは、価値を費やす行為である。投資は、生産手段に資金を投入する事。或いは、生産手段に対する支出である。貨幣の働きという点では、投資も基本的には消費と同様、価値を費やす行為である。投資と消費とを区別するのは期間、即ち、時間軸の問題である。働きは基本的に同じである。

 生産手段には、減価償却資産と非減価償却資産がある。減価償却資産というのは、一定期間で予め決められた基準で価値が失われていく物を言う。それに対して非減価償却資産は、価値が相場によって決まる資産を言う。ただし、この操作は帳簿上の操作であり、実質価値を言うのではない。実質価値は、市場取引によって定まる価値である。
 会計上の価値は仮想的価値である。
 また、金銭取引は、名目的価値を形成する。物の価値が帳簿上の価値と必ずしも一致していないのに対し、名目的価値は、帳簿上の価値と原則的に一致している。

 企業会計では、長期借入金の元本の返済額、減価償却、利益、税、キャッシュフローの関係が重要となる。この事は、経済の根本に関わる問題でもある。


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