千万人と雖も吾往かん
私は、十五の歳に学問を志した。
吾十有五而志乎(干)学。
私も還暦を過ぎ
耳に順う事を悟った。
我也過了六十。
六十而耳順。
作事謀始。
物に本末あり、事に終始あり。
先後(せんご)する所を知れば、則ち道に近し。
物有本末、事有終始。知所先後、則近道矣。
古(いにしえ)の明徳を天下に明らかにせんと欲する者は、先ず其の国を治む。
其の国を治めんと欲する者は、先ず其の家を斉(ととの)う。
其の家を斉(ととの)えんと欲する者は、先ずその身を修(おさ)む。
其の身を修めんと欲する者は、先ず其の心を正す。
其の心を正さんと欲する者は、先ず其の意を誠(まこと)にす。
其の意を誠にせんと欲する者は、先ず其の知を致す。
知を致(いた)すは物を格(ただ)すに在(あ)り。
古之欲明明徳於天下者、先治其国。
欲治其国者、先斉其家。
欲斉其家者、 先修其身。
欲修其身者、先正其心。
欲正其心者、先誠其意。
欲誠其意者、 先致其知。
致知在格物。
物を格(ただ)して而(しか)る后(のち)知至(いた)る。
知至(いた)りて而(しか)る后(のち)意誠なり。
意誠にして而(しか)る后(のち)心正し。
心正しくして而(しか)る后(のち)身修まる。
身修まりて而(しか)る后(のち)家斉(ととの)う。
家斉(ととの)うて而(しか)る后(のち)国治まる。
国治まりて而(しか)る后(のち)天下平らかなり。
天子より以って庶人に至(いた)るまで、壱(いつ)に是れ皆身を修むるを以っ
て本(もと)と為す。
物格而后知至。
知至而后意誠。
意誠而后心正。
心正而后身脩。
身脩而后家齊。
家齊而后國治。
國治而后天下平。
自天子以至於庶人、壹是皆以脩身爲本。
理を窮(きわ)め性(せい)を尽くし以て命(めい)に至る。
和順於道德而理於義、窮理盡性以至於命。
往(おう)を彰(あきら)かにして来(らい)を察し、
微(び)を顕(あき)らかにして幽(ゆう)を闡(ひら)く。
彰往而察来,而顕微闡幽。
善よく建つるものは抜けず、善く抱くものは脱ぬけず。
子孫もって祭祀して輟やまず。
これを身に修おさむれば、その徳すなわち真なり。これを家に修むれば、その徳すなわち余あまる。これを郷に修むれば、その徳すなわち長ながし。これを国に修むれば、その徳すなわち豊ゆたかなり。これを天下に修むれば、その徳すなわち普あまねし。
故に身をもって身を観み、家をもって家を観、郷をもって郷を観、国をもって国を観、天下をもって天下を観る。われ何をもって天下の然しかるを知るや。これをもってなり。
善建者不抜、善抱者不脱。子孫以祭祀不輟。修之於身、其徳乃眞。修之於家、其徳乃餘。修之於郷、其徳乃長。修之於國、其徳乃豐。修之於天下、其徳乃普。故以身觀身、以家觀家、以郷觀郷、以國觀國、以天下觀天下。吾何以知天下然哉。以此。
君子學以聚之,問以辨之,寛以居之,仁以行之。
学びて思わざれば、すなわちくらし、思いて学ばざれば、すなわちあやうし。
学而不思則罔、思而不学則殆。
君子は徳を進めて業を修む。忠信なるは、徳を進むる所以(ゆえん)なり。辞を修めてその誠を立つるは、業に居る所以なり。
至るを知りて之に至るに、幾(いく)ばくに与うべし。終を知りて之を終れば、義を存するに与うべし。是の故に上位に居りて而も驕らず、下位に在りて而も憂えず。
故に乾乾し、その時に因りて惕(おそ)るれば、危うしと雖(いえど)も咎無し。
君子進德脩業。忠信、所以進德也。脩辭立其誠、所以居業也。知至至之、可與幾也。知終終之、
可與存義也。是故居上位而不驕。在下位而不憂。故乾乾因其時而惕。雖危無咎矣。
苟(まこと)に日に新たに、日日に新たに、又た日に新たなり。
苟日新、日日新、又日新。
人須(すべか)らく事上に在りて摩練し、功夫(クフウ)を做(な)すべし
乃ち益あり。
須在事上磨錬、做功夫、乃有益。
同声相応じ、同気相求む。水は湿(うるお)えるに流れ、火は燥(かわ)けるに就く。雲は龍に従い、風は虎に従う。
聖人作(た)てば万物睹(み)る。天に本づく者は上に親しみ、地に本づく者は下に親しみて、則ち各その類に従うなり。
同聲相應.同氣相求.水流溼.火就燥.雲從龍.風從虎.聖人作而萬物睹.本乎天者親上.本乎地者親下.則各從其類也.
麗沢(れいたく)は兌(だ)なり。君子(くんし)以もって朋友(ほうゆう)講習(こうしゅう)す。
麗澤、兌。君子以朋友講習。
くんしもってどくりつしておそれず、よをのがれてうれうることなし。
君子もって独立して懼れず、世を遯れて悶うることなし。
君子以独立不懼、遯世无悶。
習坎は、孚あり。維れ心亨る。行けば尚ばるることあり。
習坎。有孚。維心亨。行有尚。
天の将に大任を是の人に降さんとするや
必ず先づその心志(しんし)を苦しめ
その筋骨を労し
その体膚(たいひ)を餓やし
その身を空乏し
行ひその為すところに払乱せしむ。
心を動かし、性を忍び
その能はざる所を曾益せしむる所以なり。
人は恒(つね)に過ち、
しかる後に能く改む
心に困しみ、慮に衡(はか)りて
しかる後に作(おこ)る。
色に徴(あら)はし、声に発し
しかる後に喩(さと)る。
入りては則ち法家、払士(ひっし)無く
出でては則ち敵国、外患無くば
国は恒(つひ)に亡ぶ。
然る後に憂患に生き、安楽に死するを知るなり。
天将降大任於斯人也。必先苦其心志、労其筋骨、
餓其体膚、空乏其身、行払乱其所為。所以動心忍性。曾益其所不能。
人恒過、然後能改。
困於心、衡於慮、而後作。
徴於色、発於声、而後喩。
入則無法家払士,出則無敵国外患者,国衡亡。
然後知生於憂患,死於安楽也。
自ら反みて縮からずんば(なおからずんば)、褐寛博と雖も吾惴れ(おそれ)ざらんや。
自ら反みて縮ければ(なおければ)、千万人と雖も吾往かんと。
自反而不缩,虽褐宽博,吾不惴焉
自反而缩,虽千万人,吾往矣。
立ちて方を易えず
立不易方。
人を知る者は智(ち)、自みずから知る者は明(めい)なり。人に勝つ者は力あり、自みずから勝つ者は強(つよし)。足るを知る者は富み、強(つとめ)て行なう者は志あり。その所を失わざる者は久し。死して亡びざる者は寿(いのちながし)。
知人者智、自知者明。勝人者有力、自勝者強。知足者富、強行者有志。不失其所者久。死而不亡者壽。
人皆人に忍びざるの心有り。
人皆有不忍人之心。
是(これ)に由(よ)りて之を観(み)れば、惻隠の心無きは、人に非ざるなり。
羞悪(しうを)の心無きは、人に非ざるなり。
辞譲の心無きは、人に非ざるなり。
是非の心無きは、人に非ざるなり。
惻隠の心は、仁の端なり。
羞悪の心は、義の端なり。
辞譲の心は、礼の端なり。
是非の心は、智の端なり。
由是観之、無惻隠之心、非人也。
無羞悪之心、非人也。
無辞譲之心、非人也。
無是非之心、非人也。
惻隠之心、仁之端也。
羞悪之心、義之端也。
辞譲之心、礼之端也。
是非之心、智之端也。
上善じょうぜんは水のごとし。水は善よく万物を利して争わず、衆人しゅうじんの悪にくむ所に処おる。故に道に幾ちかし。居るは善く地、心は善く淵えん、与うるは善く仁、言は善く信、正すは善く治、事は善く能、動くは善く時。それただ争わず、故に尤とがなし。
上善若水。水善利萬物而不爭、處衆人之所惡。故幾於道。居善地、心善淵、與善仁、言善信、正善治、事善能、動善時。夫唯不爭、故無尤。
天下之公也。公言之而已矣。故言之而是、雖異於己、乃益於己。言之而非、雖同於己、適損於己也。益於己者、己必喜之。損於己者、己必悪之。
蝸牛(かぎゅう)角上(かくじょう)何事をか争ふ
石火(せきか)光中(こうちゅう)此(こ)の身を寄す
蜗牛角上争何事,石火光中寄此身。
心を無窮に遊ばしむるを知りて、反りて通達の国に在るは、存するが若く亡きが若きか
知遊心於無窮,而反在通達之國,若存若亡乎。
良薬は口に苦くして病に利(き)き、忠言は耳に逆らえど行いに利く。
良藥苦口而利於病,忠言逆耳而利於行
小人は不仁を恥じず。不義を畏れず。利を見ざれば歓(すす)まず。威(おど)さざれば懲りず。
小人不恥不仁。不畏不義。不見利不勧。不威不懲。
井(せい)は邑(ゆう)を改むれども井を改めず。喪(うしな)ふなく、得るなし。往来(おうらい)井(せい)を井(せい)とす。
井,改邑不改井,无喪 无得,往來井井。
燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや
燕雀安知鴻鵠之志哉
己に克ちて礼にかえる。
克己復礼。
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